保存食と聞くと、私は毎朝食べる味噌汁が一番に頭に浮かびます。味噌に関しては、ちょうど5年前の今頃、白川村に暮らすおばあさんに教えていただき、自分で一から造りました。
約半年間、発酵を待ち、完成した自家製味噌はほんのり甘くて、忘れられないおいしい味でした。自分の手で造るおいしさを知った我が家では、翌年以降、味噌づくりを続けていることは言うまでもありません。
白川村の保存食は味噌だけではありません。自然學校がある馬狩地区には、かつて集落があり、そこで生まれ育ったおばあさんに、以前、冬の食べもの事情についてお話を伺ったことがありました。豪雪地帯の白川郷では、餅が冬の大切な主食で、雑穀や木の実を入れた餅を切らさないようにしていたそうです。その1つが栃の実が入った餅、「栃餅」です。
栃の実は見た目は栗とよく似ていますが、とても苦くて、アクを抜かなければ食べられたものではありません。実に含まれるサポニンという成分により、とても苦くて、かつ渋いです。秋にはたくさん実らせますが、森のなかに暮らすリスやネズミ、ツキノワグマといった木の実を食べる野生動物も、この栃の実を一度にたくさん食べることができません。この苦味は子(種子)を守るために、栃が身(実)につけたものなのです。
そんな栃の実が入った餅、「栃餅」を白川郷の先人たちは食べていたのです。でも、この苦い実をどうやって先人たちは食べていたのでしょうか。調べてみると、各家庭で多少違いはありますが、次のような工程があることがわかりました。
①実を拾う
②数日間、水につける
③数日間、天日干し
この時点で保存。その後、餅をつくる際、
④一晩、お湯につける
⑤皮をむく
⑥熱湯に実と灰汁を入れ、一晩灰汁につける
⑦水で洗い、流水にさらす
⑧もち米と一緒に蒸す
(⑦の工程後の時点で苦み成分が抜けていなければ、また⑥⑦を繰り返す)
白川村では、保存食にするためにこんな手間をかけていたのです。
私はこの工程の多さに驚き、同時に先人たちの智恵に感動しました。もちろん先人たちもこの食べ方を最初からわかっていたわけではないと思います。試行錯誤を繰り返し、失敗もして、そういった積み重ねの結果、栃の実を食べることができるようになったのだと思います。
先人たちの創意工夫の結果として、知恵がたくさん詰まった保存食。今後も後世に残していけるよう、多くのおばあさんやおじいさんから吸収していきたいと思っています。
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コメント
そうですね!保存食と言えば氷餅も良いですね!雪国の方々が厳しい冬を乗り切る主食の一つとして重宝していた食材と思います」。(解釈が間違っていたら済みません)
haru さん、コメントありがとうございます!
氷餅のこと、私は初めて聞きました。白川村出身の同僚にも聞いてみたのですが、初めて聞いたと言っていました。調べてみると、信州名物の1つだそうですね。また、岩手県など東北地方でもつくられているそうです。いつか私も食べて(作って)みたいです。haruさん、素敵な情報ありがとうございます!
ブログの保存食に関する記事を拝見し決心しました。今、手作り味噌作りキットが手元に届きました。
栃の実、美味しいですよね!栃木県に行くと、道の駅や高速SAには、これでもか?と言った具合に栃の実を加工した製品が売っています。
しょうがないですね。なんたって栃木県の県木は栃の木ですから(笑);おそらくです。
※保存食は先人の方々が厳しい住環境で暮らして行くが為に試行錯誤しながら生み出してきた知恵だと思います。後世に活かされたIT環境を目の前に控えた私たちは、先人の方々の知恵を引継ぎ、伝えて行く必要があると感じています。
haru さん、手づくり味噌に挑戦ですか、良いですね!仕込みから完成までの発酵を待っている時間も私は好きです。どんな味になるのか、楽しみですね☆記事を読んで、味噌づくりを決心していただいたなんて、嬉しいコメント、どうもありがとうございます!